2018年2月14日水曜日

2017.2.13 一歩手前

しおが淺野さんに向かって、身を乗り出している。
テーブルの上にうつ伏せにおいてやると、腹ばいになって身を起こす。
「こっちにくるかい?」
淺野さんが両手を揃えて、テーブルを優しく叩いた。

しおは声で、目で、表情で、その音に反応する。
あー きゅっ にっこりと笑って
そっちに行きたそうに 


どうしたらいいかを考えている

片手を伸ばす
その反動で 両方の手が浮いて 
パラグライダーのポーズになる

手と足をバタバタさせて
それからまた両手をついて持ち直す

私はその時間の中に
永遠にとどまっていたいと思う。

やがて お尻が片方だけ わずかに持ち上がる

彼女は手を宙に伸ばして
時間を前に手繰り寄せた




2018年2月12日月曜日

2017.2.12 愛と愛の狭間

私が何日か夜に家をあけたことで、
順がしおりの寝かしつけをできるようになった。
新しい局面に入ったんだなあと思う。

せっかく彼が始めてくれた習慣。
私も寝かしつけを添い乳なしでやってみようとして
順がひさしぶりの飲み会に行っている間に試みてみた。

しおは乳を求めて泣いた。
ずっと泣いていて、いたたまれなくなった。
出産とは長い別れの始まりと、出産のときに思ったことを
繰り返し思う。

乳をあげたい、安心させてあげたい、飲む姿を見ていたい
この子がひとりで眠りにつけるようにしてやらねば

愛と愛との狭間で揺れながら
泣き続けるしおを抱きしめて ぎゅっと抱きしめて
嵐のような夜を漂っていた。

しおは30分くらい泣き続けると すうと泣き止んだ

静寂。

また思い出したように泣き、その度にゆりかごの歌を歌った。