2016年1月9日土曜日

パナマ空港にて


夜の滑走路にCOPAの機体が等間隔に並んでいる。
その間をバスや荷物を引っ張るカーゴがせわしなく行き交う。
ジャンボ機の奥にバスが小さく見えて、レゴの世界みたいだ。

あの荷台のどこかに私の荷物も乗っているのだろう。
豆粒みたいに小さいそれは
もうすぐジャンボに積み込まれていくはず。

この夜が明けたらチリだ。

21歳のときに初めて訪れた場所。
思えばあの時は逃るように向かった。

27歳のときには、
再訪する飛行機の中で逃げ出したくなった。

地球の裏側にいつも、あの国がある。
強い磁力を放って 私を引きつけ、
極が変われば引き離してきた。


そんな風にちょっとドラマチックに書いてみたけれど
33歳の私は、ただ楽しみに明日を待っている。
とても穏やかな気持ちで。

何人かの人たちと再会する以外、
住む場所さえもまだ決まっていないけれど。
ただ、これからの日々を楽しみだと思っている。





ネットデトックスな1ヶ月


「キューバにはインターネットがない」と、みなが口を揃えて言うので、仕事方面の調整を全部終えてから、かの国に向かったのだけれど、実際のところを言えばネットはあった。それもWiFiが1時間2ドルで使えた。(あってもADSLが一般的で添付資料のやり取りは無謀と言われていたのだけれど)。

使える場所はとても限られていて、小さな街だと町の中心広場。ハバナだと高級ホテルの中にある喫茶店か、その外半径3メートルくらい、あるいは目抜き通りのベンチ。高級ホテルの中にいるのは外国人ばかりだが、屋外のwifiスポットはキューバ人が熱心にスマートフォンを覗き込んだり、強者はラップトップを広げていたりするのですぐに分かる。

しかし仕事ができる環境か?と言われるとそこまでではなかった気がする。アクセスは一般のホテルやホームステイ先、カフェの中ではまずできない。ちょっと調べもの、をするのに片道15分かけて高級ホテルまで行って、なかなか来ないウェイターさんに珈琲をなんとか淹れてもらえるように頼んで,ようやくネットに繋げる。あるいは通りのベンチで話し好きのキューバ人が次々とやってくるのをかわしながらスマホにかじりつく(感じ悪い)の、どちらかになる。

それにwifiカードのことを教えてくれたキューバ人から、2ドルは平均的なキューバ人の給料の4日分だということを聞き、それでもwifiカードの需要が急上昇していてカードが売り切れていたりする様を見ていると、よっぽど緊急でもない限り、むやみやたらと使うものではないなあという謙虚な気持ちも湧いてくる。

私の場合は、家族がちょうど手術をすることになったこともあって、その状況確認と、あとは現地のキューバ人となんとか落ち合う為の連絡手段として使ったくらいで、日常的なネット活動はすっかりご無沙汰になってしまった。

おかげでずいぶんとデトックスになった。メールは数日おきにチェックをしたが、フェイスブックはほぼ見ずに終わった。メキシコに戻ってきて「24時間部屋でwifiが繋がります」という状況に久しぶりになって、エンドレスに流れてくる友人たちのアップデートを、ぽかんと眺めている。

ぽかん、というのか、なんとなくそこにある情報も文章も上手く入ってこないのだ。フェイスブックの世界に入って行く時の、思考回路というかノリみたいなのが戻ってこない。

それまでは頭に浮かぶ文章がSNS用に勝手に編集されて困っていたことさえあったのに。

良い機会なので、しばらくこのままにしておこうかなと思っている。

ポストしようとすると、すぐにSNSマインドに戻りそうだし、それはあんまり望ましくない。ポストしないと、ネットの波に喰われているだけの人になるしね。

wifi繋がらない時間に何をしていたかといえば、道行く沢山の見も知らぬ人と話して、手当たりしだい本を読んでいた。


ネットが繋がった今、その1ヶ月でできなかったリサーチや、仕事を再開しているので、そのうちまたSNS感覚も戻ってくるのだろうけれど、今はできるだけ生のインプットと、自分の文章の(SNS用に編集されていないやつ)のアウトプットに集中できればなと思う。