明け方に引っ越しの荷造りを終え、バックパックを担ぐ。
早くサマータイムが終わらないかしらと、
真っ暗な朝5時半の道を歩きながら思う。
この町は朝の7時半過ぎまで明るくならないのだ。
家の近くにはひとの気配がない。
しばらく歩くと深い闇の中から脈略もなくタクシーが2台現れる。
1台をやはりどこからともなく現れた若者たちが拾い、もうひとつを私が拾う。
送ってくれた夫に引っ越しを託して、私はメキシコシティに向かう。
ちょっとした「出張」が入った。
日本で会いたいと思いながら連絡できずにいた人が
なんの因果かメキシコシティに来ていることを知った。
私はその人をいつか取材したいと思っていた。
その前に話さなければいけないことも沢山ある気がしていた。
そう思いながら、結構な時間が経っていた。
高速バスに乗って6時間半というと東京からどこまでいけるのだろう。
日本にいたら、私はこの出張をしただろうか?
したような気もするし、しなかったような気もする。
「したい」とも「しよう」とも思いながら、
正当化できなくて先延ばしにしていた気もする。
「旅」という概念は、直感に従おうとするときに力を貸してくれる。
暗がりの中を走り出したバスのシートで
少し冷えた体を胎児のように丸く抱えながら
本当はどんな日常も旅であることを、思い出す。
眠りから覚めると、太陽は曇り空を透けて差し込み、
高速道路はその向こう側に大都市の予感を含んでいた。
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